Jeff Lorber Interview – The Drop album
都内某所, 2023年 9月10日
インタビュア Tom Oshima
2023 Shanachie Ent. Corp. Credits
このアルバムのこれまでと違った取り組みとしては、新しいメンバーが参加しているところかな。サックスのRandal Clarkは初めての参加になるけど、彼の最新アルバムに参加したことが縁ということで、僕のアルバムにも参加してもらった。非常に音楽に対するケミストリも合致していて、良い演奏をしてくれたよ。彼は実際良い作曲もするし、才能のあるサックスプレーヤーだね。ソロのメロディとか、1曲目The Dropのブリッジセクションの演奏など彼の演奏能力の高さや特徴が出ているし、アルバム中の彼の演奏を聞いてみてもらうと彼の良さも直ぐにわかると思う。
続いてCornelius Mims、アルバムの殆どでベースを弾いているけど、R&B音楽をコアに持っていて、僕がデモで書いたベースラインを彼の特徴を入れてより良いものに仕上がった。僕が書き上げたときはシンセベースで、彼はそれに生音の良さを吹き込むというか、楽器の持つ表現力を載せて良いベースラインが録音されている。
Jimmy Haslipは、今回はアルバムの数曲で、いつもの6弦ベースでメロディ部と、ソロ部に対して演奏参加していて、Marc Lettieriは、Snarky Puppyのギタリストで彼のソロ作を聴いたとき演奏は素晴らしいくノックアウトされたね。Gary Novakとのコネクションで彼を知ることになるのだけど、若くフレッシュで、才能もあるし将来の楽しみなギタリストの1人というのは間違いないと思う。
アルバム作成の途中でも色々なディレクションやアイデアも提案してくれたよ。ファンキーグルーブなラインや、ジャジーなラインどれも良い演奏であるし、コード構成的にも少しトライアディックなところの演奏やクラシック・カントリー調の曲なども特徴が出ている、例えば2曲目のAltered Stateなどは特徴的だよね。そしてドラムのGary Novak、近年のアルバムやライブギグでも、一緒に演奏することが多い、僕のお気に入りのドラマーだよ。
意思疎通だけでなく演奏自体もダイナミックで表現力も抜群だしね。相性的なものもあると思うけど、Garyに僕のスタジオに来てもらって、最初のデモ演奏など書き始めたときなど、数時間一緒に居て、もの凄い早さで5、6曲作ってしまったことなど思い出されるよ。
彼は、いつもプロフェッショナルな姿勢で音楽に取り組んでいることもそうだけど、2人の意思疎通もスムースで、非常に気に入っているよ。もちろん最終的にアルバムがでるまでには、お互いのスタジオで再録音や調整もしたりするけど、Garyのドラムは、エモーショナルで僕の即興スタイルに合わせた最適なドラミングを入れてくれる。
ドラムは音楽の基盤になるところだから、本当に大事だしGaryと一緒にできて嬉しいね。他には、David Mannは素晴らしいホーンアレンジをしてくれたし, Peter Mokranは僕のアルバムに良く参加しているミキシングエンジニアだね。Paul Jackson Jr.は、The Dropで参加してくれたよ。
#1. The Drop
Keyboards, Rhodes and Piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Alto sax: Randal Clark
Rhythm guitar: Paul Jackson Jr.
Rhythm guitar: Jeff Lorber
Horn arrangement and performance: David Mann
The Dropはアルバムにある他の曲とは違っていて、曲の最初から最後まで基本的にはジャム感覚やグルーブが存在してはいるのだけどそこに色々なインプロビゼーション的な試みを取り入れていて、新鮮なものになっていると思う。Bセクションではディセンディングやエイセンディングのシーケンスが入り、ブリッジセクションのコード構成も斬新なつくりになっているところとかね。Randal Clarkがブリッジを弾いているよ。オリジナルブルースジャムに、斬新なフレーバーとしてブリッジがはいったりして、面白い録音の取り組みになったかな。
レイドバック調ではなく、ブルースに対してアグレシッブなアプローチもした特徴的な曲でもあるしね。最後の8小節はターンアラウンドのコードとしても気に入っているフレーズだね。David Mannのホーンアレンジと僕の即興スタイルが上手くブレンドされた曲でもあると思う。
#2. Altered State
Keyboards – strings, rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: James Haslip
Melody 6 string bass: Jimmy Haslip
Guitars: Marc Lettieri
とてもメローで、少しリズム隊がR&B調であって、クラシカル・フォークミュージック調のインフルエンス、ジャズとは違うフレーバーが組み合わさり新しさを見いだせたような曲だよ。1970年代のボストンのような、Pat Metheny, Steve Swallow, Gary Burton 等 ジャズとフォークミュージック・トライアドを混ぜた取り組みや、僕の曲でもWizard IslandやWindfallsも同じような取り組みになると思うけど、そういったトライアドを使ってオープンで、ファンクやグルーブでなく、メロディにフォーカスした曲と言えるよね。ここでもMarc Lettieriが良い演奏をしてくれているね。
#3. New Mexico
Keyboards- minimoog, rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Alto sax: Randal Clark
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Horn arrangement and performance: David Mann
メロディ、特にBセクションのコード構成など気に入っているよ。このBセクションのコードだけれども何年も前に書き下ろした曲を再発見したということがきっかけになっているんだ。この再発見もあり作曲に対してもさらに集中したというか、とても気に入っているよ。
#4. On the Bus
Keyboards-rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Rhythm guitar: Jeff Lorber
とてもメロディアスで、ファンキーでもある名前の通りバスに乗っているときや運転中に適している曲かもね。曲のタイトルも気に入っている。Marc Lettieriはダラス出身なのだけれどダラスのように広大な土地をアドベンチャー目的に運転して、みたいなストーリーも描けそうな曲だよ。(笑)この後の欧州ツアーでも演奏する予定にもなっているんだ。
#5. Hang Tight
Keyboards: rhodes and piano: Jeff Lorber
Melody 6 string bass: Jimmy Haslip
Drums: Gary Novak
Synth bass: Jeff Lorber
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Rhythm guitar: Jeff Lorber
印象的なメロディでメロディフォーカスな曲だね、ライブにもこの曲のようなスローテンポを入れることも考えているよ。僕の曲はアップテンポなものが多いし、実際ライブでもアップテンポなものは人気があるけど。この曲は、クールダウンさせる使われ方をしても良いかもね。(笑)
#6. Liberty
Keyboards- minimoog, rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Melody 6 string bass: Jimmy Haslip
Soprano sax: Randal Clark
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
ストリングス音が印象的な曲だよね、Spitfire Audio社のVirtual Instrumentsを使っているのだけど、ストリングスが本当にリアルで、気に入ってね。この曲はファンキーでメロディも良いけど、やっぱりストリングスがインパクトとして大きな部分を占めていて、全体を引っ張っているようになるかと思う。Bセクションもクロマティックなシーケンスで、そのあとにジャジーなコード編成が来ているけどメロディの良さは保てているし、ジャズコード編成自体も面白いと思うよ。
#7. Keep on Moving
Keyboards- rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Synth bass: Jeff Lorber
Melody 6 string bass: Jimmy Haslip
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Alto sax: Randal Clark
Rhythm guitar: Jeff Lorber
Horn arrangement and performance: David Mann
この曲は、アルバム作成の初期の方で作られた曲だね。普通とは違うものが好きな兆候例えば、ファンキーメロディックな曲があるけど、これはスタンダード路線というかTune 88のような色々な人が聞いても普通に聞き入れられるというかね、人気のあるスタンダードの曲のような。まったく複雑でなくとてもベーシックでストレートフォワードという曲だね。ライブでも皆に気に入ってもらえるといいね。
8. Mindshare
Keyboards: minimoog, rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Melody 6 string bass: Jimmy Haslip
Alto sax: Randal Clark
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Rhythm guitar: Jeff Lorber
Horn arrangement and performance: David Mann
これは僕なりの70年代のCTI的な曲調やシンコペーションを取り入れたトリビュート曲でもあるかな。
この曲はFreddie Hubbardへのトリビュート曲、Red Clayに似たというかね。ジャズ・ファンク・グルーブが全て交わったもののような。
サスペンデッドコードが使用されたHerbie HancockのMaiden Voyageとか当時は色々と斬新なものが出てきていた時代だね。
9. Reception
Keyboards-minimoog, rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Melody flute: David Mann
Lead and rhythm guitars: Marc Lettieri
Rhythm guitar: Jeff Lorber
Melody flute: David Mann
Horn arrangement and performance: David Mann
この曲は、スイングだね。僕はスイングも好きだけどね。ミディアムテンポで、ファンクでメロディアスな曲だね。カラフルなジャズ・スイング調が入っているというか、セクションごとのメロディも強調されているし、かつコアグルーブ路線の曲だね。
#10.Tail Lights
Keyboards: rhodes and piano: Jeff Lorber
Drums: Gary Novak
Bass: Cornelius Mims
Alto sax: Randal Clark
Lead and rhythm guitar: Paul Jackson Jr. rhythm guitar: Jeff Lorber
Horn arrangement and performance: David Mann
アルバムの最後の曲にふさわしいタイトルで、家路に向かうために運転して前の車のテールライトが印象的というのが、ストーリーとしてのテールライトだけど(笑)この曲はDavid Mannのホーンアレンジが冴えているね。僕の代表曲の一つでもあるRain Dance のようなシンコペーション調のファンクだね。新しいアプローチの曲だと思うよ。